慶應通信でのぼやき

慶應通信文学部3類(英文学専攻)に所属する意識低い系ニートの備忘録。主に自分の恥レポートを晒して四苦八苦している人の手助けをするよ!

慶應通信:専門科目「現代英文学」

現代英文学

現代英文学は、1900〜現在に至るまでのイギリス文学を対象としています。レポートは書きやすい問題でしたが、自分で選んだトピック&作品のくせに思いの外、内容が重くてレポートを書きながら萎えました。

 

現代英文学って要はカズオ・イシグロとか、J.Dローリングとか今も現役の作家さんたちも対象なのですが、(ちなみにレポートで扱ったサラ・ウォーターズさんは今も活動されている作家さんです。)やっぱり取り扱うテーマとか時代背景が近いからすっごく重く感じるんですよね。

 

例えば、私は第一次世界大戦も太平洋戦争も体験したことないけれど、私のおばあちゃんとおじいちゃんにはその記憶にあって、当時のことを話してくれたりするから遠く感じない。だから胸にズンとくる、みたいな感覚です。

 

「現代英文学」の合格レポート↓

 

問「1:70〜90のイギリスにおける現象の中であなたが一番興味を惹くものについて論じる。2:サラ・ウォーターズの作品と世界を説明する。」

 

現代英文学

 

(1)祖母が肺がんと診断されさらに末期であったことから治療が困難であると医師から宣告された時私は、クローン技術や細胞再生の技術が今使えれば、祖母の命を救えるのではないだろうかと思った。高齢であるのにも関わらず、(おばあちゃんは死なない)という自分勝手な盲信をしていた私にとって余命宣告はあまりにも突然すぎて、彼女に何かをしてあげるのには全く手遅れであった。そのほかの場面でも子育て、勉強、仕事が重なり忙殺されそうになる時期は、自分があと3人くらいいれば、上手くこなせるのにとため息をつくことがある。24歳の私にとって科学技術、例えば「ドラえもん」、「鉄腕アトム」に登場するような科学技術は、驚くような未知の世界というよりは近い未来に実現する、もしくはもう近いものが現実に存在するという認識がある。このような理由から今回は数ある科学技術の中から「クローン」を選択し「クローン」の概要とこれらに取り巻く諸問題を実際に起きた事象と、ゴシック小説であるFrankenstein(1818)を例にとり考察する。

 1996年7月にスコットランドにあるロスリン研究所のウィルムット博士チームによって「ドリー」と名付けられたクローン羊が誕生し、1998年には日本でも2頭のクローン牛が誕生した。人間クローン作成についての法的規制について欧米各国で議論され、2000年には日本でもクローン技術を用いた人の生産は禁止された。「クローン羊」の誕生は様々な議論を生み出したが、「クローン」の真の問題点は法整備の不十分さや安全性の問題にはないと考える。はじめにクローンの語源は、ギリシャ語の「Klon(小枝)」であるが、現在では「遺伝的に同一である個体や細胞(の集合)」を指すよ生物学の用語として用いられるようになった。人間を含めた哺乳類は、両親のそれぞれのから遺伝的な特徴を受け継ぐ。何万種の遺伝子の中からどの遺伝子が受け継がれるかは偶然に決まる。また、親子であっても持っている遺伝的特徴は異なる。しかしながら、クローン技術を用いれば、同じ親から生み出された子同士はほとんど同じ遺伝的特徴を持つ。体細胞クローンは無性生殖により発生する。無性生殖では、同じ遺伝子が受け継がれるためには有性生殖の場合のように偶然の組み合わせによる多様性がなく、同じ親から生産された個体同士全て同じ遺伝子を持つクローンとなる。(1)このようにクローンは単なるコピーではない。特定の能力・性格」は指さず、一卵性双生児程度である。言うならば、「delayed twin」である。しかしながら、双子は偶然であるのに対して、クローンは意図的に生成されたという違いがある。つまりクローンには「遅い双子」がいても親はいないのである。(2)「クローン人間」の応用として例えば、子供を亡くした夫婦が亡くなった子供と同じDNA特徴を持つ「クローン人間」を誕生させた場合、この「クローン人間」がひとりの人間としてではなく夫婦のノスタルジーの投影の対象になってしまうという問題がある。

 イギリスゴシック小説の代表であるMary Wollstonecraft Godwin Shelley(1797-1851)のFrankenstein(1818)を現代のクローン技術と結びつけるのは陳腐な考察とも言えるが、この怪物の物語が、近代科学の発展を背景にして着想を得ていることも含めて今日においても有効性を失っていない。物語は、スイス人科学者のフランケンシュタインが「理想の人間」の設計を志し、生命を自在に操作することが神に背く行為と知りながらも、自ら墓を掘り起こして死体を手に入れそれらを繋ぎ合わせて作成を試みる。しかし完成したのは、優れた体力と知性を持ち合わせているものの外見が醜い怪物であった。怪物の創造主であるフランケンシュタインは、そのおぞましさに絶望しひとり故郷のジュネーブに帰ってしまう。Frankensteinが神に反抗するプロメテウスであるならば、彼が想像した怪物は、発明者、さらには全人類を破滅の危機に追いやる科学発明の一つであり、その成果が世界におよぼす影響を考慮しない危険や自身の発明、発見の責任から逃れる科学者の無責任さ、人類の幸福、真理の探究のためという純粋な探究心の裏にあるエゴイズムが提示されている。(3)小説の作者であるMary Shellyは政治家であったWilliam Godwin(1756-1836)とフェミニズム運動の先駆者であったMary Wollstonecraft(1759-1792)の間に生まれた。しかしMaryの母は彼女の出産が原因で産後間も無くこの世を去った。物語の怪物も母親を持たない。また父親ともいうべきフランケンシュタインは博士は、怪物を拒絶し逃げてしまう。怪物の物語は、遺伝( DNAの呪縛)と環境(親や社会から受ける不当な教育、固定観念など)から自由であるという人間の望むべくもない幸福は同時に人間の想像に及びもつかない不幸が起きる必然性を説いている。(4)

 クローン技術の発見から約四半世紀経った現在、クローン技術はどのように進歩し私たちの生活に応用されていくのか。毎日新聞によれば、スイスに本拠を置く新興宗教団体ラエリアン・ムーブメントのフランス人科学者のブリジット・ボワセリエ氏は27日に夫の男性不妊に悩む30歳の米国人女性の体細胞を使って妊娠し女児を出産したと発表した。(5)一方で人間の臓器提供のためだけに作られたクローン人間たちも存在する。臓器提供に使われたキャシー、トミー、ルースは人間とは言えないのであろうか。(6)前者のように不妊治療の末に誕生し、人権を獲得する「クローン人間」と後者のように臓器提供のために作られいつかは殺されてしまう「クローン人間」が同時に存在し両立することはできないのである。それは自然の摂理から外れた誕生がゆえに、蔑ろにされてしまう可能性があることであり、生命を弄ぶことになりかねないからである。

 

(2) Sarah Waters(1966-)はウェールズ出身のミステリー作家である。Tipping the Vevet(1998)ではBetty Trask賞を受賞し、Affinity(1999)ではSomerset Maugham賞を受賞した。Sarah Waters の作品には同性愛の描写が多く描かれており、作者自身もレズビアンを公言している。(7)

 Tipping the Velvet(1998)Affinity(1999),Fingersmith(2002)などWatersの作品にはヴィクトリア朝時代が多く扱われておりとりわけAffinityでは、レズビアン、監獄、心霊術といったテーマが読者を魅了する材料になっている。物語はミルバンク監獄の慰問に訪れていた主人公マーガレット・プライアーとミルバンク女子刑務所で「詐欺と暴行」の罪で懲役5年の刑を受けている女囚で霊媒師のシライナ・ドーズという階級も境遇も違う二人の女性が綴った日記が交互に物語を構成している。ミルバンクでマーガレットとシライナが出会い、マーガレットが美しい女囚シライナに惹かれ、自分のレズビアン的欲望に気付くことになる。物語は、欲望の自覚、進展、絶望という流れをとっている。マーガレットは上流階級出身の貴婦人であるが30歳になっても結婚が決まらない(オールドミス)であり、彼女は愛する父親を亡くしたショックで自殺未遂を起こしたことから気分転換のために、さらに貴婦人の義務である慈善活動の一環としてこのミルバンク刑務所に慰問に通うようになった経緯がある。またマーガレットの美しい妹は婚前で家を空けており、弟は自分の親友のヘレンと結婚してしまい、気の合わない母と二人で生活をしている。マーガレットは上流階級に内在する婚姻の常識・慣習から外れてしまった孤独な女性として描かれている。(8)

 物語の終盤でマーガレットがシライナとイタリアへの逃亡を決意する場面では、シライナを妹の嫁ぎ先の家族の元へ連れて行ったらどのような反応をするかと考えた時に「何が彼らをいちばん怖がらせられるだろう。シライナが霊媒であることか、女囚であることか、女だということか」(315)と語られるように、当時のヴィクトリア朝の人々にとって「レズビアン」は「霊媒」や「犯罪」と同じように恐怖の対象として捉えられていたことが垣間見える。(9)実際にイギリスでは、1885年の刑法改正法(Criminal Law Amendment Act)の成立以後男性同士の親密な関係が犯罪化され、20世紀後半に成立した性犯罪法(Sexual Offences Act)によって犯罪から脱した経緯がある。(10)

 ヴィクトリア朝は「霊媒」が流行した時代でもある。科学も未発達であったこともあり、交霊会が詐欺と批判されても、交霊会がいかさまであることを証明することができなかった。人々は霊媒や交霊会に関心を示す一方で、社会の秩序を乱す「犯罪」として認識されていた。Terry Castleによれば「レズビアンは私たちとともには決してないように見えるが、いつでもどこかにいる」とし、亡霊はレズビアンのメタファーであると指摘する。(11)また物語に登場する亡霊(ピーター)に扮するルースは、レズビアンであった。このように見えないけれど「存在する」ことがレズビアンのリアリティを表していると言える。また存在するが個人として認識されていないメイドのルースもレズビアンのリアリティを象徴していると言える。貴婦人とメイド、母親の監視下に置かれている女性と自由に周囲を歩くことが出来る女性、という対比構造が物語の転覆を裏付けであり、さらに監視している立場の人間が、実は監視され操られていたという逆転が社会的な意味を持つと言える。

(3998文字)

参考文献リスト

 

(1)(2)蔵田信雄『クローン技術の真の問題』

(3)渡部充 不在の子宮ーメアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』を読むー

 (4)佐々木眞理『科学者ヴィクター・フランケンシュタイン:メアリー・シェリーは科学と科学者をどう捉えたか』 

(5)毎日新聞2002.12.27

(6)アイザック・アシモフ『生物学の歴史』太田次郎訳 講談社学術文庫 2016年 60p

(7)サラ・ウォーターズ 公式サイトhttps://www.sarahwaters.com(2019.2.25閲覧)

(8)Affinity. New York:Riverhead,1999.(『半身』中村有希訳,東京創元社,2007)

 

 

半身 (創元推理文庫)

半身 (創元推理文庫)

 

 

 

 (9)(10)(11)平林美都子語られなかったもう一つのレズビアン・プロットーサラ・ウォーターズ の『アフィニティ』2-3p

(12野田恵子 イギリスにおける「同性愛」の脱犯罪化とその歴史的背景ー刑法改正法と性犯罪法の狭間でー

 

レポートを書いてみて

(1)はもう少し結論をまとめられたなと思います。(2)のサラ・ウォーターズさんの作品は基本的に長編であること、時代設定が古い、研究資料少なすぎ、和訳されている作品も少なすぎとなかなか大変でした。

 

余談ですが・・・・・・

レポートは他の科目に比べて設問も採点も易しい印象ですが、科目試験が少し大変です。教科書の範囲から超えることはありませんが、(え!?そんなところを!?)みたいなところを問うてくる試験です。きっと教科書を7回読めば安心できます。

あと教科書の初めの方に付いている年表も頭に入れておきましょう。私が試験受けた時に出ました。(見といてよかったー)