慶應通信でのぼやき

慶應通信文学部3類(英文学専攻)に所属する意識低い系ニートの備忘録。主に自分の恥レポートを晒して四苦八苦している人の手助けをするよ!

慶應通信:専門科目「英語史」

英語史

英文学専攻ならば避けては通れない科目、「英語史」です。読んで字の如く英語の歴史です。現代英語と古英語は全くの別物です。国語で古文が難しいように昔と今ではかなり言葉に違いがあったと思います。しかし、古英語と現代英語は段違いで別言語です。訓練しないと読めません。

 

A1  Hwæt, wē Gār-Dena    in geār-dagum
 B1  So.  The Spear-Danes in days gone by
 C1   いざ聴き給え、そのかみの槍の誉れ高きデネ人(びと)の勲(いさおし)、民の王たる人々の武名は、

後期06「イギリス文化論」(2020/10/20) 『ベーオウルフ』序詞1~25行、古英語原文と現代英語訳と和訳を比較 - xapaga

これはBeowulf(ベオウルフ)といって古英語で書かれた現存するもので最古の作品と言われています。イギリス文学史にも一番最初に出てくる作品。英米文学を専攻する人は必ず知っていなければならない作品の一つです。

内容はまぁ面白い作品なので映画なり本なりで見てみてください。因みに私の父は以前くれた大量のDVDの中にもベオウルフがありました。指輪を捨てに行く例の物語(笑)などファンタジーが好きな人には堪らない!て感じの作品なんですが、、、

 

余談はさておき、上にベオウルフの原文、英文、訳文があるのですが、どうですか?読めますか?in くらいしか読めませんよね?英語史はなんで英語がこんなに変化したのか?と言うのを知ることができます。ちなみに英語が今の形になった過程はまだ解明されていないことも多く、多くのミステリーが残る分野なのです!

 

ちなみに慶應通信でも教鞭を取っておられる堀田隆一先生のブログです。英語史に関することをただひたすら書いているブログです。とても参考になるので是非!

hellog〜英語史ブログ

 

長らくお待たせしました!実際に合格したレポートをご覧ください。

「英語史」の合格レポート↓

問「英語における綴り字と発音の乖離について述べる」

 

英語史

 

はじめに

 

英語は綴り字と発音の乖離が多く生じる言語のひとつである。例えばknightは nάɪt(米英語)であり、Kとghは発音されない。しかしながらおそらく古英語期のknightはクニヒトと発音されていた。このように綴り字と発音の一対一はいつどのような要因で崩れたのか。

(1)古英語期のローマ字の導入

(2)ノルマンディーの征服によるフランス語の借用

(3)活版印刷と辞書

(4)大母音推移

(5)ラテン語ギリシャ語からの借用

の5つに分類して考察したい。

 

 (1)古英語期のローマ字の導入と古ノルド語

 古英語期には2つの書記体が用いられており、ルーン文字として知られているゲルマン諸語に用いられた古い体系と、597年に聖アウグスティヌスの宣教を受けてアングロサクソン人がキリスト教化した際に採用されたラテン・アルファベットである。[i]ラテン語を模範としながら英語で書かれた文献は700年頃から出現し、英語を書き表す独自の手法や文字( æ など)が現れ、また綴り字に厳格な規定がなく写字生によっても綴りは多様であった。さらに古英語後期になると、イングランド南西部のエセックス王国がイングランド全域の政治的な影響力を持つようになったことで、ウェスト・サクソン方言の発音に基づいた標準綴り字が発達した。[ii]またラテン語を書き表すことに特化したローマ字(23字)に35の音素を持つ英語を当てはめることに無理が生じた。このように早い段階において英語の綴り字と発音の乖離は生じていた。[iii] 

 また6世紀から7世紀頃には、強勢のある音節の母音が次の音節にあった/i/または/j/の影響を受けて変化した。これは、中間の子音を発する際に次に/i/と/j/を想定するために調音点が前寄りになる口蓋化(palatalization)の現象が起こり、この口蓋化した子音が前の母音の舌の位置まで影響を及ぼしたとされる。[iv]この現象をドイツの言語学者ヤーコプ・グリムはi-Umlaut(イーウムラウト)と名付けた。4世紀頃のゴート語では、i-Umlautは見られないが、Anglo-saxonsがブリテン島に来た頃の地名や人名にはi-Umlautが起きており、例えば mann–menn(dat.sg.)やdohtor−dehter(dat.sg.)などはi-Umlautによって説明できる。

 

 (2)ノルマンディの征服

 1066年のノルマンディーの征服以降、英語は公的言語としての地位を失い、民衆の言語、方言の一種という扱いになり、話し言葉として軽視された結果、英語を統率する機関、英語を用いた文学、辞書、文法書も誕生しなかった一方で、イングランドでは、支配者の言語であるフランス語と当時欧州の国際共通語であったラテン語が尊重された。なぜならば、「英国国王となったウィリアム1世母語はフランス語(ノルマンディー方言)であり、英国の支配階級の言葉は、その後しばらくフランス語となった。このことにより、中英語期には英語に大量のフランス語が流入し、英語はゲルマン的な色彩を弱めロマンス語化されることになる。(寺澤,2008)」[v]中英語期では、綴り字と発音の対応が不規則になりはじめた。例えばBusyのuをiで発音するという現象が起きた。なぜなら、中英語期では英語は約300年放置され方言化されていたため、英語話者の間でも単語の綴りがそれぞれ異なるという現象が起きたからである。 

 すなわち中英語期にフランス語から約1万のフランス語が英語に借用され、現代英語では約7500語が残っている。とりわけフランス語から借用された多くは、法律、軍事、学問の用語である。一方でフランス語の借用において、1154年にヘンリー2世(HenryⅡ、1133-89)の即位により、ノルマン朝からプランタジネット朝に移行したことにより、パリで使われるフランス語(セントラル・フレンチ)が英語に流入した[vi]、英語はフランス語からの綴り字さえも借用している。例えば、古英語のlufu(愛)のは、フランス語の影響によりloveへ綴り字が変化した。さらに、フランス語の借用の影響で意味が変化した語彙も存在する。フランス語は英語に広い語彙を提供しただけではなく、語彙に階層構造を作らせ、さらに語彙以外にも句、綴り字、意味にも一定の変化を与え、たとえば、古英語で<cw>,<c>,<s>と綴られていたものが、それぞれ<qu>,<ch>,<ce>と綴られるようになった。[vii]このような古英語での綴りをフランス流の綴りに当てはめたことやフランス語に倣った発音などの要因で綴り字と発音の乖離が生じるようになった一因である。

 

 (3)活版印刷と辞書

 公的な文書から姿を消し、庶民の言葉として社会的地位の低い位置にいた英語は、14世期末以降にロンドンの政治・経済・文化的影響力の強まりと共に地位が復活し始める。15世期末には、ヨハネス・グーテンベルク(1398-1468)の活版印刷機が大陸からもたらされたことにより、多くの人々が文字を目にするようになった。英国においてWilliam Caxtonが最初に印刷本を出版した英語の書物数は、20,000以上であり、[viii]大陸においては、1500年までに出版された書物数は35,000に達すると言われている。さらに、ウィリアム・シェイクスピアのFirts Folio(1623)は500から600部印刷されたと推定される。[ix]このことから、印刷物の普及は想像を超えて早く、膨大であった。「まず熟練を目指す印刷工はそれぞれの語をそれぞれ単一のつづり字で示そうとしたであろうということ。さらに、これらの出版物は、当時相当の数に達していた。(宇賀治、2000)」[x]つまり、印刷工たちは本を読むことのできる人々に綴寺のお手本を示したといことになり、綴り字の固定化に少なからず影響している。

 英語の綴り字の固定化を決定的にしたのは、1775年にサミュエル・ジョンソン(Samuel Johnson)の辞書が出版されたことである。「標準化の過程では、正音学者、綴字改革者、教育者、辞書編集者、印刷業者がそれぞれ影響力をもち、実際の綴字標準化には思いのほか長い期間が必要であったのである。(堀田、2016)」[xi]また、同時期に大母音推移や学者たちによるラテン語借用語の影響で綴り字と発音がその語乖離することになった。

(4)大母音推移

日本語の母音はあ(a)い(i)う(u)え(e)お(o)とローマ字読みされるが、英語の場合はaは/ai/、uは/ju:/、eは/i:/、oは/ou/となり元のローマ字読みからはかなり離れているためNameを「ナーメ」ではなく「ネイム」と発音するという現象が起こるのである。これは中英語後期の1400年から約300年にわたり強勢をもつ長母音に大規模な音変化が起こった。この音変化は「大母音推移」(Great Vowel Shift)と呼ばれる。例えば、「大母音推移によって中英語の/o:/という長母音は、/u:/に高められたため、現代英語では、food,fool,loose,moon,rood,root,soon,spoon,stool,toothの母音寺ooは/u:/と発音される。(寺澤、2008)」[xii]また、中にはooと綴られていても、/u:/と発音されない語もあり、これらは大母音推移によって生じた長母音/u:/からさらに変化を受けたからである。例えばcook,foot,shookなどは、長母音/u:/から短母音化され/u/と発音が変化していった。

 

 (5)ラテン語ギリシャ語からの借用

 古英語期にもキリスト教の伝来とともに多くのラテン語が借用されたが、ルネサンスによる古典の復活により、ラテン語ギリシャ語の使用が促進された。ギリシャ語においては、biology(生物学)、analysis(分析)などの主に学術用語である。一方のラテン語においては、16世紀半ばを頂点に約1万語が英語に流入し、英語の語彙に大きな影響を与えたラテン語の多くは書き言葉を通しての導入であり、とくに英国の宗教改革者ジョン・ウィクリフ(John Wycliffe,1330?-84)やその弟子たちによる英訳聖書には、原典にあるラテン語聖書から借用した1000以上の新たなラテン語彙が見られる。

 ラテン語の借用は語彙のみならず綴り字にも影響を及ぼした。「中英語期にフランス語を経由して英語に入ってきたラテン語は、形態が崩れていることが多かった。伝言ゲームではないが、英語に入ってくる過程でフランス語などを経ると、どうしても原形が崩れてしまうのである。(堀田、2011)」[xiii]ルネサンス期の学者たちは元々英語に根付いた「崩れた形」を古典ラテン語の「正しい形」に訂正した。このことにより、ラテン語のdebitumがフランス語経由でもたらされた時にフランス語では既にdetteという形になっており<b>は抜けていたが、より語源に忠実な綴りにしようとした結果debtという綴りになった。このように元がラテン語であってもフランス語経由で持ち込まれた際にすでに綴り字が崩れている場合などがあり、それをさらに英語に当てはめることは、綴り字と発音の乖離を招く十分な条件である。

 

むすび

 英語は現在も多くの地域の言語から影響を受けている。このように英語は、歴史の観点からも絶えず変化する言語である。ME期にはOE期のWS方言のような共通語がなく、文学作品においても各人の自由な綴り字で執筆していた。またShakespeareの時代の英語においても、当時の標準英語といえば宮廷の教養人の英語を指すが、現代のReceived Pronunciationほど確立されたものではなく、当時の人々は発音や綴り字に関して寛容であったと考える。

 さらに古ノルド語との接触による格変化の水平化やフランス語との接触における大量の語彙の借用は特に英語の発音と綴り字の乖離を起こした大きな要因であると言える。

(4046文字)

 

 [i] サイモン・ホロビン 堀田隆一訳、『スペリングの英語史』,早川書房,2017,54頁

 

 

スペリングの英語史

スペリングの英語史

 

 

[ii] 堀田隆一,『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』,研究社,2016,10頁

 

英語の「なぜ?」に答える はじめての英語史

英語の「なぜ?」に答える はじめての英語史

  • 作者:堀田 隆一
  • 発売日: 2016/11/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

[iii] 堀田隆一,『英語史で解きほぐす英語の誤解 納得して英語を学ぶために』,中央大学出版会,2011,101頁

 

 

 

[iv] 岩崎春雄,『英語史』,慶應義塾出版会,2017,34頁

[v] 寺澤盾,『英語の歴史』,中公新書,2008,41頁,17‐22行

 

英語の歴史 過去から未来への物語 (中公新書)
 

 

[vi] 寺澤盾,『英語の歴史』,中公新書,2008年,63頁

[vii] 堀田隆一,『英語の「なぜ?」に答える はじめての英語史』,研究社,2016,11頁

[viii] Baugh,AlbertC,(1959)A History of the English Language,Routledge&Kegan Paul,London

[ix] McKerrow,Ronald B,(1917)”Booksellers,Printers and Stationers’ Trade”,Shakespeare’s England,VolⅡ,ed, by Sidney Lee and C.T.Ohions,212-239

 

[x] 宇賀治正朋,『英語史』,開拓社,2000年,69頁,6‐8行

 

英語史 (現代の英語学シリーズ)

英語史 (現代の英語学シリーズ)

 

 

[xi] 堀田隆一,『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』,研究社,2016,12頁,2‐3行

[xii]寺澤盾,『英語の歴史』,中公新書,2008年,109頁,1‐4行

[xiii]堀田隆一,『英語史で解きほぐす英語の誤解 納得して英語を学ぶために』,中央大学出版会,2011,114頁,22‐25行

 

レポートを書き終わって

英語史は2回目の提出で合格しました。次回は英語史不合格レポートとともに何故一発合格できなかったのかを考察したいと思います。