慶應通信でのぼやき

慶應通信文学部3類(英文学専攻)に所属する意識低い系ニートの備忘録。主に自分の恥レポートを晒して四苦八苦している人の手助けをするよ!

慶應通信:専門科目「アメリカ文学」

アメリカ文学

文学部第三類なので専門は基本的に文学系が中心となります。

問「17世紀ピューリタン植民地時代から20世紀ポストモダニズム、21世紀の現代に至るまでのアメリカ文学における「アメリカの夢と悪夢」についてアメリカの歴史と連動について述べる。」(問題文は略しています)

アメリカ文学」の合格レポート

アメリカ文学 

はじめに 

17世紀から20世紀にかけてのアメリカ文学には「アメリカの夢と悪夢」が埋め込まれており、これらが歴史的に反復されている。この題についてアメリカの黎明期ともいえるBenjamin Franklin,とThomas Jeffersonの作品とアメリカの成熟期のMark Twain作品である。3作品を教科書から抜粋し、作品と歴史的な背景を結びつけながらレポートの解としたい。 

ベンジャミン・フランクリン1706-1790今もなお世界で一番有名なであり、印刷屋から始まり発明家、作家、政治家、独立宣言起草委員会などの経歴を持ち、アメリカの「建国の祖父たち」の代表格であり、今日の100ドル紙幣の表には彼の肖像が刷られている。ロンドンの日刊紙『ジェネラル・アドヴァタイザーに掲載された、ポリー・ベイカーの弁論(1747)では、コネティッカットで5人の私生児を出産したアメリカ人女性ポリー・ベイカが、結婚して家庭を持つことを理想とした厳格なピューリタン思想の元で下された法的な判決に対して法廷弁論にて果敢に挑み、法廷弁論で観衆の心を動かし最終的に裁判員一人と結婚に至るまでが描かれている。この法廷弁論は主にイギリス、フランスなどの環大西洋で大評判になり話題になった。本文の「I always was, and still am williing to enter into it; and doubt not my behaving well in it, having all the industry, frugality, and skill in oeconomy, appertaining to a good wife's character.いつだって私は喜んで結婚するし、家計のやりくりが得意なので良妻の素質がある。とあるようにポリー・ ベイカには、自分が良妻としての素質があるという自負があり、結婚する気持ちがあるものの相手が結婚してくれない状態であることが分かる。ポリーは自分は聖書にある「産めよ増やせよの教えを体現しており、結婚意欲もあるのにも関わらず、何故姦通罪として女性である自分のみ罰せられなければならないのかと訴えている。 

1700年代後半は徐々に女性運動が始まる頃であることもあり、ポリー・ベイカーは大西洋でアイドル化された存在になる。iさらに当時のアメリカにおいて「18世紀という時代は、ピューリタニズムや神政政治がその力を失い始めたとはいえ、その影響力は根強く残っていたと考えられる。そこには、伝統的なピューリタニズムが根深く存在しており、私生児も私生児を出産した女性も肩身を狭くして生きてゆかざる得ない現実が待ち受けていた。それは女性だけではなく男性も同様であった。植民地には、不義をはたらいたことによって産まれてきた子供の父親が明らかになれば同じように罰する法が存在していた。ピューリタニズムにおいて、婚姻つまり夫婦というものは、社会を構成する最も小さな単位として考えられており、ポリー・ベイカーのような女性の存在は、まさに彼らが描く伝統的な理想の社会とは対立するものであった。」ii 

続いて作者の結婚観については考察する。べンジャミン・フランクリンはイギリスに留学する際恋人デボラとの別れを余儀なくされ彼がアメリカに帰国すると結婚を待ちきれなかったデボラは、先に別の男性と結婚してしまう。一方でフランクリン自身も私生児を設けてしまう。しかし彼女の夫が行方不明であったこともあり、フランクリンの私生児を長男として二人は結婚する。『ポリー・ベイカーの弁論』はこの一連の出来事のあとにフランクリンによって執筆されたと考えられており、人生の誤植の修正がみてとれる。iiiさらにフランクリンは「時は金なり(Time is money)という言葉を残したように時間というものに強いこだわりがあり、人生の初段階のうちの過ち(誤植)は成功さえすれば、後から修正可能という現代のアメリカの精神に受け継がれている。このように、「フランクリンは、独立前夜にして活字メディアの可能性を知り尽くし、そこでは真実と虚構の区別がたえず危ういことを誰よりも深く理解していた人物ivであったのである 

第3代大統領トマス・ジェファソン(1743-1826、在位1801-09)は政治家であり、文筆家でもあった。『独立宣言』(1776)で彼は33歳ながらアメリカ独立宣言の執筆した。『独立宣言』では、ピューリタンの神中心(Humiliation)つまり神の法から、自己依存を肯定する自然の法と、自然の神の法へと変わるというピューリタニズムからユニテリアンへのパラダイムシフトが背景にある。『独立宣言』の中でも要である「all men are created equal(全ての人間は平等)」という文言におけるall menは1776年の時点では白人の男性においてのみ適応されたと言っても過言ではない。例えば白人であっても、アメリカにおける女性の参政権が認められたのは1919年であり、第一次世界大戦の女性の参加と参政権獲得が連携している。vトマス・ジェファソンは黒人についてdistant people (アフリカからアメリカに無理矢理連行された人々)と表現しall men に黒人(Black)を適応させる(奴隷解放)ことを望んでいたが、この問題について言及した文は削除された。恐らく南部からの猛反発により現実にはならなかったという背景があり、奴隷解放は約100年後のエイブラハム・リンカーン(1809-1865)大統領による奴隷解放宣言まで待つこととなる。viジェファソンが黒人の人権について熱心だった理由のひとつに、彼は黒人奴隷を所有していたが妻の死後に奴隷の黒人女性との間に家庭を持っていたからであると考えられている。 

しかしながら奴隷解放の先駆けをしようとした一方で、インディアン(Native American)には、従来の彼らの生活様式であった狩猟をやめさせ、ヨーロッパ式の文明的な生活様式に変えるようにすることや、インディアンと白人の混血児政策を推奨した。またジェファソンはこれらに従わないインディアンを野蛮見なし、「all men」に適応させる考えはなかった。viiさらにジェファソンは『独立宣言』において彼の意思とは裏腹に書き換えと添削をされたが、啓蒙主義キリスト教の影響を受けた彼が晩年に執筆した『ナザレのイエスの人生の教え』(1820)では、聖書では書かれている受胎告知や東方三学者などの超自然的な話は添削され、イエスの誕生からイエス・キリストが十字架に磔られ死亡したところで話が終わり3日後の復活やキリストの昇天などの超自然的な話はここにおいても添削されていた。彼は従来の超自然的な三位一体(Trinity)を否定し、ヒューマニズムに満ちた人間イエスを認めるという聖書の編纂を行った。viii 

こうした思想背景の中で、民主主義国家であるアメリカで書かれた『独立宣言』には人権と平等における現実と矛盾、さらに前述からの誤植の書き換えが行われていた。さらにイギリスからの独立を目指したアメリカには、「all men are created equal」という理想的で先導的な言葉、人々の心を惹き付けるMagic Word(魔法の言葉)が必要であり、この文言はベトナム戦争フェミニスト運動などアメリカの歴史上で頻出するフレーズとして現在でも使われる。 

18世紀に独立宣言から19世紀の南北戦争が起こり、1890年にはフロンティア消滅という従来のネイティブアメリカンを虐殺して行った領土拡大が終焉を迎える。そして1898年にはフィリピン等の植民地スペインから独立させるための米西戦争が起きわずか一年後にはフィリピンの原住民との米比戦争(1899年-1902が勃発する。アメリカは西半球支配権を制し、太平洋まで抜けるパナマ運河を開通させる。教えることは治めることとし、フィリピンやグアム、グアテマラ初等教育等で支配するようになったアメリ大陸フロンティア開発は1890年に達成したが、その後のフロンティア開発は海を越え1830年冥王星発見を皮切りにソ冷戦期の頃になると宇宙開発へと規模を広げる。このような惑星思考ともいえるアメリカのフロンティアスピリットはアメリカのモダニズム文学を形成する大きな要因になった。ixさらに19世紀のPax BritanicaからPax Americana」 とアメリカを中心とした相対的平和が現在まで続いている。 

マーク・トウェイン(1835-1910)の『戦争の祈り』(1904-1905)では、民主主義国家にも関わらず領土拡張主義走り、アメリカ初代大統領ジョージ・ワシントン1732-1799王にしようとしたアメリカの帝国化(American Imperialismを揶揄した作品である。If you pray for the blessing of rain upon your crop which needs it, by that act you are possibly praying for a curse upon some neighbor's crop which may not need rain and can be injured by it.「もし自分の畑のために雨乞いをして、雨が降ったとしよう。しかし同時に雨が必要なかった隣の畑を雨で一杯ににて荒らしてしまうことなんだこの一文からは、神の名の下においても一人の都合や理想によって他者が被害を被るというアメリカの領土拡大主義を批判し、真の民主主義社会という現在に至るまでの課題提起している。アメリカは独立の際にイギリス式ものを一切排除することを徹底した一方で、民主主義国家でありながらもかつての大英帝国のように帝国主義的な領土拡大行い、現在に至るまで軍需に依存しているアメリカの悪夢が詰め込まれている。 

むすび 

Franklinは作品の中で非嫡子のいた事実を正当化し、一方のJeffersonは、『独立宣言』において「all man are created equal」としながらも、自分たちに服従しないネイティブアメリカンや女性の人権について言及を避けるのみならず、原文で都合の悪い箇所を切りとり、他の文章糊付けを行った。これらの作品は例えば、太平洋戦争の際に日本に2度原子力爆弾を投下したという事実は決して、都合の良いものとは言い難い。しかしながら、その不都合を認めることも決してなく、戦勝国としてその行為を正当化してしまうアメリカの性質をよく映し出されていると考える。 

 

参考文献

i 巽 孝之,『アメリカ文学』,慶應義塾出版会,2017 年,p.21
ii 竹越佳誉子,『沈黙する男と発言する女ーベンジャミン・フランクリンとポリー・ベイカーー』
富山大学教育学部紀要,No .59:43-50,2005 年
iii 巽孝之,『アメリカ文学史』,慶應義塾出版会,2003 年,p.48
iv 巽孝之,『アメリカ文学史』,慶應義塾出版会,2003 年,p22,27-29 行
v 柴田元幸,『アメリカ文学のレッスン』,講談社現代新書,2000 年,p59
vi 巽孝之,『アメリカ文学史』,慶應義塾出版会,2003 年,p29
vii 清水重忠,『トマス・ジェファソンのインディアン論』,神戸女子学院大学論集,41 巻3号 21-
39 頁,1995
viii 巽孝之,『アメリカ文学史』,慶應義塾出版会,2003 年,p30
ix 巽孝之,『アメリカ文学史』,慶應義塾出版会,2003 年,p70

 

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                             (3992文字) 

講評

教科書を元(根拠がはっきりしている)にしたレポートでよくまとまっているとのことでした。

私はスクーリングでアメリカ文学を受講した後にレポート作成したことが功を成したように思います。近いうちに今回のレポートで取り上げた作品をじっくり考察したブログも書きたいと考えています!

 

次回は「英語史」の合格レポートを公開したいと思います。