慶應通信でのぼやき

慶應通信文学部3類(英文学専攻)に所属する意識低い系ニートの備忘録。主に自分の恥レポートを晒して四苦八苦している人の手助けをするよ!

慶應通信:教養科目「社会学」

社会学

社会学は試験が持込可なのでオススメの科目です。レポートでは「ホームレス」について考察し、論じました。

社会学の合格レポート

はじめに
イギリスは発祥のホームレス支援の一環としてホームレスに街頭で雑誌の販売を委託するビッグイシューは日本でも行われているが、知名度ビッグイシューの目的を理解している人は未だ少数であるという印象であり、ホームレスに対する偏見やホームレス支援に対する意識の薄さが大きな要因であると考える。さらに日本では、ホームレスになってしまった原因は自身の非であるや不景気のせいであると考える人が多いのが実情といえる。今回は、社会学のテキスト402ページにある5「何がホームレスの原因であり、どうすればホームレスの問題に最もよく取り組むことができるか。」という問いについて他国の事例をもとに比較し、その中でもホームレスが少ない北欧の取り組みを踏まえて、考察したい。現在日本には、約6235人の人々がホームレスとなっているが、実体数は3倍ほどという指摘もある。ここでは、日本で行われているホームレス支援の実例と、日本人のホームレスに対する意識調査を中心に比較考察し他の先進国で行われているホームレスの自立支援を例にとり、ホームレス問題の最良の策を考察する。


ホームレスの定義
ホームレスには4つのタイプに分けることができ、各国によってホームレスの定義に違いがある。
1.ルーフレス(Roofless)
道路、公園などの公的スペースに寝泊まりするいわゆる野宿者のみに限定した最も範囲の狭い定義。
2.ハウスレス(Houseless)
野宿者に加えて、様々な種類の一時宿泊施設・収容施設に寝泊まりする者も含む定義である。
3.インスキュア アコモデーション(Insecure accommodation)
野宿者・一時宿泊施設等の滞在者に加えて、親戚・友人等の部屋に住んでいる者や不法に住居を占拠している者等不安定な形態で住宅に居住している者も含む定義。
4.イントレラブル ハウジング(Intolerable housing)
最も幅広いタイプの定義であり、住宅に安定的な形態で住居している者のうち、その居住する住宅の水準が社会的に許容可能な水準に達していないものまで含む。
このうちホームレスの定義を2.ハウスレスにしているのはアメリカ、イギリス、ドイツ、ノルウェーであり、フィンランドでは、3.インスキュア・アコモデーションまでと幅広くホームレスの対象としている。冬には厳しい環境になるフィンランドでは、そもそも野宿者の数が少ないことに加えて、他の欧州諸国に比べて独立に重きを置く伝統があり、親戚の家に間借りするという状態はあまり好まれないことがホームレスの定義の拡大に貢献した理由といえる。4.イントレラブルハウジングを定義として採用しているのはオーストラリアであり、ホームレスを「安全な住居への十分なアクセスが確保されていない者」としているため、親戚等の家に間借りしている者、質の悪い住居に住む者まで含まれる。一方日本では、1.ルーフレスをホーム
レスの定義としているため、山谷・寿町・西成などのドヤ街で日雇い労働者として生活費を稼ぎ、安い簡易宿泊所で寝泊まりしている者はホームレスとはみなされない。また若者のホームレスも増えており、定職に就かずにネットカフェなどで寝泊まりしている者もおり、社会問題になっているが日本ではホームレスに該当しないため、社会的弱者という点ではルーフレスの者たちと変わらないが、公的な支援は受けづらい状況であるといえる。(1)


ホームレスが生み出される原因
イギリスにおけるホームレスについてギデンス氏は、1960年以降の保険医療政策の変更により、長期入院型精神病院に入院していた精神疾患学習障害者たちは、財政負担を理由に野放しにされてしまった。「調査結果は、約四人に一人が精神病院で過ごしたが、あるいは精神病との診断を受けてきたことを一貫して示している。したがって、保健医療政策の変更は、ホームレス状態発生頻度に大き過ぎる影響を及ぼしている可能性がある。とはいえ、ホームレスのほとんどは、かつて精神病患者でもないし、アルコール依存症患者や違法薬物常習者でもない。ほとんどのホームレスは、個人的な不運を、しばしば一度に複数の不運を経験したがために、気がついてみれば街頭に身を置く人たちである。ホームレスになることが「原因と結果」の連鎖とじかに結びつくのは、ごく稀である。」(2)またホームレスには、家庭内暴力や虐待などの理由によって家から疎遠になってしまった者のように、多くのホームレスは社会との関係
が途切れてしまったものが多い。大岡氏の調査では、尼崎市に住む60代の女性ホームレスの場合は、夫からのDVから逃れるために住み込みでホテル従業員の職を得たが、職場でも経営者の男性から暴力を振るわれ、ホームレスになったという経緯である。(3)つまりホームレスになる過程で、「不景気」、「自業自得」が原因であるとは一概にはいえない。なぜならばこのような者たちは、生まれたときから或いはホームレスになる以前から社会的に排除された立場であった場合があるからである。


ホームレス支援の実情
日本では特に1990年代を境にホームレスが急増した。この状況から2002年に「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」が制定され、日本における初めてのホームレスに対する法的処置である。また、ホームレスの予防として2013年に生活困窮者自立支援法が制定され、ハローワークなどの活用で就業支援を行っているが、求人元が虚偽の申告をし、過酷な労働や法外な賃金で雇用するケースも多く、人材を使い捨てのよう扱うようなブラック企業の対策を講じる必要がある。(4)住居確保や就業支援を進める一方で、精神・肉体の医療ケアやソーシャルワーカーの介入はあまりなく不十分であると言える。

ホームレスに対する意識調査
公利主義とは個人にとっての効用、厚生、幸福、福祉などの分野で、社会の幸福を社会的集計値において最大化することを理想とするものである。一見公共性に満ちた思想であるが、「考慮されるのは、効用、幸福の最大化のみである。また、集計値のみが評価の対象であり、個人間の分配の平等や不平等が考慮されなく、集計値の一元的評価主体が想定されていて、異なる個々人の立場からの社会選択の過程が無視されている。さらに、人々の効用を基礎とすることは、不利な環境に適応する諦念や他人に対する嫉妬や悪意を含む判断をもたらす。」(5)例えば、子育て支援や地域福祉支援などの市民の関心が高いもの、または数値的に効果が期待できる項目を達成するために、暗黙の枠組み(財政のキャパシティ)が設けられ、少数派の項目に対する解決が後回しにされやすいことが指摘される。さらに、このような一般市民のホームレスに対する「自業自得」的な考え、「異界」という認識が問題意識をさらに希薄化させ、日本のホームレス支援の整備の不十分さ、他の先進国に比べ遅れがある大きな要因であると考える。そのためには、ホームレスに対する理解のみならず、極端な収入格差の解消や平均賃金の引き上げ、更に医療福祉などの公的サービスの充実をはかるための税金の引き上げなどの社会主義的な経済活動が不可欠である。


ホームレスの少ない北欧を例にとって
福祉国家とも言われている北欧諸国は、ホームレスの数が少ない。なぜならば、行政の手厚い保証やソーシャルワーカーの働きによるホームレス支援が他国よりも充実している。また、ホームレス支援だけではなく、全ての国民が医療、介護、保育、大学までの教育費などが無料で受けられることにより、ホームレスなどの社会的弱者の支援に不満を持ちづらい。


むすび
先進諸国では、ホームレスの就労支援だけでなく、住居支援、福祉支援、予防支援、医療ケアなどの多方面からアプローチを取っている。例えば、ドイツでは、ホームレスの住宅獲得までにソーシャルワーカが家主との交渉に当たったり、入居後もソーシャルワーカーによる訪問支援が行われている。アメリカでは、ホームレスが適正な食事を得るための「フードスタンプ」を実施している州もある。さらに、イギリスでは住宅法により、ホームレスへの住宅手当と住宅確保が義務付けられている。またオランダも同様にセーフティネットとしての社会保障が充実しているため、失業などでホームレスになることは稀である。(6)このように、一般市民のホームレスに対する理解を深めること以外でも、ホームレスの自立支援には行政の介入なしには大きな改善は難しいものである。また、東京都のホームレスの精神疾患有病率は、精神疾患ありが50%、内訳は41.3%がうつ病、15%がアルコール依存症、15%が幻覚や妄想などの精神病性障害であり、55.7%が自殺危険ありであった(7)ホームレスの多くが精神的な疾患などを抱えていることから物理的な支援のみならず、早急な精神ケアと医療やカウンセリングの機会を定期的に設けることが必要である。またホームレスを生産しないという点では、教育の充実が必要である。ホームレスの多くが過去に経済面で進学を諦めた者が多いことによる低学歴・特殊技能を持たない者が多く、就業する際に支障になることがある。このように日本ではホームレスのような弱者を保護する制度は完全とは言えないどころか、生活保護費の値下げなど切迫した状況である。

約70年前のナチス・ドイツが行った安楽死計画のように、財政や社会状況などを理由に国家が緊迫した状態にあると、多少の時間をかけてその歪みは弱者に向けられるようになる。弱者の問題に目を向ける余裕がないという状況にはらむ危険性を知るべきだと考えた。

(3925文字)

参考文献リスト

(1)OECD諸国におけるホームレスの定義及びモニタリングに関する調査 長谷川貴彦 (日本建築学
会計画系論文)第588 2015)pp.142-145
(2)アンソニー・ギデンス 『社会学 第五版』 (而立書房 2015年)pp.384
(3)(6)大岡由佳、辻丸秀策、菊池哲子、大川絹代、大西良、鋤田みすず、岩永直美、福山裕夫『ホーム
レス支援における福祉的アプローチの意義―ホームレスとなったDV女性に対するソーシャルワーカの
一例から―』 (久留米大学文学部紀要、社会福祉学科編 5巻 2005年)pp.47-56
(4)福原宏幸 中山徹日雇労働者の高齢化・野宿化問題 大阪に即して』pp.21
(5)川元みゆき 『「貧困は自己責任」の言説に抗するために』 (社会学批判1号 2009)pp.15-20
(6)森川すいめい、上原里程、奥田浩二、清水裕子、中村好一 『東京都の一地区におけるホームレス
精神疾患有病率』 (2011年5月15日 第58巻 日本公衛誌 第5号)pp.331

 

社会学 第五版

社会学 第五版

 

 

 

レポートの講評

内容面、レポートの体裁としても問題ないとのことでした。私は、ホームレス問題について個人的に興味と意見を持っていたので選択しました。「女性問題」と迷いましたが、「ホームレス問題」の方が具体的なデータが多かったり、主張も絞りやすかったです。このような自分でテーマを設定するようなレポートでは

  • 具体的なデータを示す
  • 比較対象を作る(日本と海外など)
  • 「はじめに」にレポートの方向性、「むすび」に自分の意見を盛り込む

を心がけています。

 

次回から遅ばせながら、「専門科目」の合格レポートを公開したいと思います。