慶應通信でのぼやき

慶應通信文学部3類(英文学専攻)に所属する意識低い系ニートの備忘録。主に自分の恥レポートを晒して四苦八苦している人の手助けをするよ!

「文学」の合格レポート

「文学」合格レポート

文学のレポートです。私は英米文学を選択し、テーマは英米文学における家族の問題でした。本レポートで取り上げてる作品はルイーザ・メイ・オルコット(1832-1888)の『若草物語』です。

実際の合格レポートです。

 

はじめに 

アメリカにおける家族の原型は、ヨーロッパの伝統である家父長制を継承しており、フロンティアでの生活と状況により、形成された。初期のアメリカ移民は、独身の男性か核家族がほとんどで、大家族制というよりは、夫婦家族、核家族がほとんどであった。また、独身男性は住処が定まらない者も多く、家族の関係も希薄であったこともあり、家庭への情景も強かった。19世紀になり、西部開拓が進む頃には、早婚と多産が推奨された。このようにフロンティア開拓の時代には、精神の憩い、拠り所である「家庭」が不可欠であった。(1)このようなアメリカの家族の在り方の変化において、ルイーザ・メイ・オルコット(1832‐1888)のアメリカの家庭小説の頂点ともいえる『若草物語』(1868)に提示されている「家庭崇拝」、「牧師としての母」、「家父長制の矛盾」を作者の生涯と南北戦争を踏まえて論じる。 

 

作者のルイーザ・メイ・オルコットについて 

ルイーザ・メイ・オルコット(Louisa May Alcott)は18321129日にフィラデルフィア近郊のジャーマンタウンで生まれた。彼女の父親は教育者であり、エマソンとも親交があったブロンソン・オルコット(Bronson Alcott)、母親はアバ・メイ(Abba May)であり、彼女は四人姉妹の次女であった。理想家で世事に疎い父親であったために、オルコット家はたびたび経済的に困窮したこともある。父親がノイローゼになったことをきっかけに、一家の生活は社会福祉に従事していた母親の収入とルイーザ・オルコットの文筆、家庭教師での収入に頼ることになった。『若草物語』はイギリスのジョン・バニヤン1628‐1688)の『天路歴程』(1678)を題材に執筆されたことは言うまでもないが、作者であるオルコットの略歴から『若草物語』のモデルは自身の姉妹、家庭をモデルにしていることが分かり、さらに『若草物語』の次女ジョーがスリラーなどの原稿料でマーチ家の家計を支えていたことなどから作者が自身を投影したと言える。加えて、オルコットの生涯であまり知られていないことで「彼女の女性運動への積極的な参加である。一八七五年、ニューヨーク州シラキュースで開催された婦人会議に出席しているし、女権運動家ルーシー・ストーンがボストンで創刊した『ウーマンズ・ジャーナル』に寄稿し、女性や若い娘の権利を主張している。一八七六年の独立記念百年祭の折、コンコードの記念式典に女性の参加が認められなかった時には、それに対抗するデモを行っている」(2)このよう彼女のフェミニストとしての活動や思想は、作品の中から読み取ることができる。 

 

若草物語』と南北戦争 

ここでは、『若草物語』は南北戦争時下の子供たちの物語という側面に注目したい。南北戦争と言っても、物語にはバトル・フロントの描写は一切なく、戦争の直接的な表現もほとんど登場しないが、父親が黒人奴隷解放を目指した北部に従軍牧師として遠征に出ている状況とそれに伴う経済的な困窮に耐える姿は、この物語が家庭小説でありながらも戦争小説としての要素もあると言える。実際に『若草物語』には、戦争のイメージが至るところに散りばめられており、例えば、物語の主人公たちのマーチ(March)という苗字には軍人の行進を連想することは容易である。「南北戦争の苦しい闘いを乗り越えて前進するアメリカの縮図としての家族である。輝かしい勝利に向かって進もうとする隊列の先頭に立つのは、女性たちなのである。『若草物語』とは、戦う女性たちを主人公とする「もうひとつの南北戦争の物語なのである。」」(3)このように、南北戦争の影響で父不在の中での家庭の困難と、四姉妹がそれぞれの性格の欠点を家族の愛と絆で、乗り越えるという構図が巧みに用いられ、読者に感動を与える効果を生み出すことになった。 

 

四姉妹の性格の欠点の克服 

若草物語』には、教養小説としての側面を持つと言える。なぜならば、マーチ家の四姉妹にはそれぞれに性格に欠点を抱えており、その欠点を克服し大人の女性に成長することがこの物語のもうひとつの大きな筋であり読者に感動を与えたと考えるからである高田賢一氏によれば、「「小さな夫人」が立派な「婦人」になるために、少女たちが立ち向かい、戦うべき「心の中の敵」とは何か。メグの場合は、虚栄心から見かけにばかり気を取られて仕事をおざなりにしがちという欠点、ジョーには、「男の子でなかったくやしさ」(三頁)から少年のように乱暴に振舞う一方、「女らしく発達していく自分の身体」(四頁)をもてあまし、すぐイライラしては感情を爆発させているという問題点。気取り屋さんのエイミーには、メグそっくりの虚栄心。家庭の中の小さな天使と言うべきベスは、まさにいつも笑顔を絶やさない理想的な少女だが、唯一の欠点としての極度の内気さがある。」(4)四姉妹はそれぞれに抱えている性格の問題を、姉妹の結託と家庭内の愛で乗り越えるのである。 

 

 

若草物語』からみる家父長制と聖家族の構図 

 

南北戦争によって父不在の状況で母と娘たちは、貧しい生活を強いられている。物語における父の描写は戦地からの手紙で構成されている。このようにの君臨しない家庭において、父の代わりになるのは母親であるマーチ夫人になる。彼女はキリスト教の教えのもとで四姉妹を「婦人」にするべく、彼女たちを導く謂わば牧師としての母親として描かれている点に注目したい。さらに、伝統的な父権性の家庭の成り立ちについて『聖母マリアの謎』の作者は、「キリスト教布教の歴史的推移のなかで古代から存在した地母信仰を母胎とした社会に父権制の社会制度が発達し、母系社会から父系社会へ移行する過程において、イエスを社会的に重要な存在として定着させるためには、養父とはいえヨセフの家系を明確にする必要があった」(5)と指摘している。しかしながら、キリスト教の教えではイエスの父は神であるので現世での父親はあまり重要ではなく、問題にならないと結論づけられ、聖家族では父親の影は薄いものである。『若草物語』では、従軍めに不在であるがマーチ氏は牧師という立場上、マーチ夫人とのパワーバランスは均等に保たれていると言える。物語では、父親不在であるがマーチ氏の威厳はしっかりと明示されており、マーチ氏の父親像をヨセフに投影するのではなく、父なる神に置き換えられていると言える。 

 

若草物語』における対比マーチ家とローレンス家を中心に 

父不在で物質的には貧しいが、母と4人の娘が楽しく暮らすマーチ家と母不在で裕福で立派な家であるが、明るい雰囲気も家庭の温もりもないローレンス家は小さな垣根を境にして対比して描かれている。「耐えることは美徳といった戦時下に生きる登場人物たちの特有の発想があるにせよ、家庭小説が含みを持つ価値観の逆転性を考えずにはいられない。家長としての父が背後に押しやられた結果、オルコットはごく貧原文ママ、貧困の中の豊かさ、父中心に対して母中心の家族関係、あるいは戦時下の混乱と憎しみに対しては、家庭を支配する調和と愛の提示などの逆転である。」(6アメリカのピューリタニズムの大きな特徴として、「富を増やし豊かになることを良しとする」ものがあるが、『若草物語』の中では、「愛のない家など家族とは言えない」というジョーの発言が意味しているように物質的な豊かさを否定し、精神的な豊かさの重要性を、マーチ夫人はたびたび娘たちに説いている。その他にも対比して描かれていることは、ジョーは「独立」、「経済的自立」を目的にしているが、ケイト・ヴォンというイギリスの金持ちの娘が、マーチ家の娘たちが働いていることについて軽蔑を示す場面があるが、作者はヨーロッパの視点を持ち込むことにより、アメリカ女性の自立の強調と性別による職業への束縛の少ない民主的なアメリカを誇る意図が読み取れる。(7 

 

むすび 

若草物語』では父中心から母中心の家族像、裕福なローレンス家と清貧なマーチ家という対立構造が巧みに表現されている。さらにオルコットは『若草物語』において、父親不在で母親が君臨する家庭模様を描き出すことによって家父長制の失墜と矛盾を提示している。オルコットの生涯を辿ると、理想主義者であるが甲斐なしな自身の父親と家計を支えるために働きに出た母親と自分の経験は大きなこの作品に大きな影響を与えたと言える。また、オルコット自身がフェミニズム運動に参加していたことから家庭における父親の権限の他に男性優位な社会構造に疑問と対抗の意識を持っていたに違いない。さらに、時代背景として工業化によって父親が家庭内での不在の時間が多くなり、従来の父権性は機能しなくなり、家庭内教育において子供たちの青年期にかける人格形成が母親の役目になったことは明らかである。このことからオルコットは、『若草物語』において南北戦争を境にアメリカに起きた社会と家族形態とそれぞれの役目の変容をを描き出し、南北戦争後の女性の生き方を提示したと考える。 

(3668文字) 

 

参考文献↓ 

 

(1)別府恵子 『19世紀アメリカ小説にみる家族の構図』 

2)(7)佐藤宏子 『アメリカの家庭小説―十九世紀の女性作家たち―』  (研究版株式会社 1987年)p.p161171  

3)(4)(6)髙田賢一 『MINERVA 英文学ライブラリー アメリカ文学のなかの子どもたち絵本から小説まで』 (ミネルヴァ書房 2004年)pp80‐110 

三頁、四頁)若草物語 

5石井美樹子 『聖母マリアの謎』(白水社1988pp.79-82 

 

 

レポートのまとめ

若草物語』を取り上げた理由として、基本的に児童文学には当時の家庭の問題が顕著に描かれているからです。『若草物語』からは、南北戦争期の家父長制とその矛盾を指摘している作品であると思います。

 

 

若草物語 (シリーズもっと知りたい名作の世界)

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  • 作者:高田 賢一
  • 発売日: 2006/02/01
  • メディア: 単行本
 

 

 

 

 

 

 

 

終わりに

本レポートまずまずの評価でした。取り上げた作品と、視点を褒められました。(もう少し掘り下げて欲しかったそうですが)

丸写しはもちろんNGですが、参考程度に!

 

次回は教養科目『論理学』のレポートについてです。