慶應通信でのぼやき

慶應通信文学部3類(英文学専攻)に所属する意識低い系ニートの備忘録。主に自分の恥レポートを晒して四苦八苦している人の手助けをするよ!

イギリス文学Ⅱ(詩)を提出しました。

注:このレポートはまだ合格かどうか分かりません

テキストで紹介されている人物を一人選び、その作品と作者の文学史上の意義を論じる。といった内容です。

 

提出したレポート

イギリス文学研究Ⅱ

 

 

ジョン・ミルトンについて

 エリザベス女王崩御から5年経った頃、清教徒で裕福な公証人の家庭に生まれたJohn  Milton(1608-74)はケンブリッジ大学にてギリシャ・ローマの古典を学び、初期の作品として仮面劇『コウマス』などを発表した。1649年にはクロムウェル政権のラテン語秘書官になったが、王政復古後に投獄されるが、Andrew Mervell(1621-78)の尽力により、処刑を免れた。1652年に両目を失明するが、娘たちに口述筆記させた彼の最大傑作『失楽園』(1667)である。 

 

ジョン・ミルトン文学史上の位置について

 17世紀の文学の中心はMiltonであり、この詩人は近世英語詩発達史上で重要な存在であるといえ、さらに当時のピューリタン思想の最大の学者であったといえる。「英国のHumanism(古典学問)はこの最後のhumanistにおいて堅緻の実を結んだ。大体英国のHumanismは宗教的で道徳的で、これをChristan Humanismと呼ぶ人があるが、Miltonの仕事もやはり、この方面にまず活躍を示したかったのであった。」(西脇、1977)Miltonは道徳宗教を大胆に検討した人物であり、その道徳宗教観はピューリタニズムそのものであり、さらに古典研究の影響によりMiltonの政治思想は共和主義的であり、Miltonは両者の思想の調和しようとした。

 Miltonの『失楽園』はとりわけメアリー・シェリー(1797-1851)の『フランケンシュタイン』で模倣されていおり、創造主とサタンの関係はフランケンシュタイン博士と怪物の関係と模倣され、作中に『失楽園』が読まれる場面も登場するため作者が『失楽園』から何かしらの影響を受けていることは、明白である。

 

 Miltonはの詩は当時の詩風のいずれにも該当せず、彼独特のスタイルである。その詩風は古典文学を極端に模倣したものであり、あまりに古典文学の語句語法を使用したもので、Miltonic dictionといわれ、英詩の歴史にあるClassical styleの元祖として考えられており、ミルトンの無韻詩は重厚な音調であり、詩の語法もClassicalで簡潔な文で日常用語をあまり使用しないという特徴がある。

 

失楽園について

失楽園』は旧約聖書『創世記』第3章の挿話をテーマにした叙事詩であり、蛇に唆されたアダムとエヴァが神からの禁を破り「善悪の知恵の実」を食べ、エデンの楽園を追放されるという内容であり、初期近代英語書かれている。またこの作品は、無韻詩(blank verse)で書かれているが、形式が通常は弱強五歩格(iambic pentameter)であるにもかかわらず、この詩では弱強格(iambus)ばかりではなく、かなり自由な詩脚(foot)が用いられ、気品にみちた格調の高さを示している。「Paradise Lostは全12巻から成る大作であり、「Adamが主人公でありながら,むしろAdamとEvaを堕落させようとするSatanに力点がおかれ、この登場人物の登場によって強烈な詩的・劇的効果をあげている。」(和田,1976)

 

失楽園』と科学

ミルトンの生きた17世紀は科学革命の時代であり、また付随して思想・社会的にも変革の時代でもあった。このような背景は彼の作品に少なからず影響を与えていると考える。『失楽園』では伝説や神話に重点は置かれてはなく、太陽の黒点、月の表面の起伏、金星の満ち欠け、木星の衛星や銀河の姿など天文学的な内容が描かれ、近代的で科学的な意識があることが分かる。

 

……the broad circumference

Hung on his shoulders like the moon, whose orb

Through optic glass the Tuscan artist views

At evening from the top of Fesole,

Or in Valdarno, to descry new lands,

Rivers or mountains in her spotty globe.

――Paradise Lost , I. 286-291

 

では、地獄のthe fiery gulf から立ち上ったサタンの巨大な双肩にあり丸く大きな「重々しい盾」(the ponderous shield) を月に懸け、この詩の天文学的なスケールの大きさが表現されている。3行目にはトスカーナの科学者たちの言及があり、望遠鏡から斑点の観測をしている描写には、当時の最新の科学技術が垣間見ることができMiltonが科学に対する積極的な関心があったと言える。またミルトンがイタリア外遊をした際にガリレオ・ガリレイ(1564-1642)と面会したという経験も少なからず彼の科学観に影響したのではないかと考える。

 

Against his will he can receive no harm.

But God left free the Will; for what obeys

Reason is free; and Reason he made right,

But bid her well beware, and still erect.

(Paradise Lost,Ⅺ,350-353.)

 

失楽園』における科学描写は目を惹くところであり理性を重視した点は、科学者同様であるがミルトン自身は知的啓発を目的としているといよりは、道徳的抑制を目的としている。『失楽園』の中で科学の地位を確立しなかった点から宗教における人間の自由と責任を主題としているからである。

 

失楽園』における自然の描写

 

ミルトンは『失楽園』の執筆時には、失明しているが自然の描写は絵画的である。ミルトンがどのようにして盲目の中自然を描写したのであろうか。「そもそも想像の詩と情緒の詩とに分けて考えうるとすれば前者はもっとも楽しいイメージを喚びおこす力であり, 与えられた事物を刺戟す る関心の力によっており,外界の自然と親んでいたその根底には道徳が存在しており,後者は記憶 と創作の力からおこる感受性からといわれている。 」(植木,1976)つまり、盲目のミルトンは、自分の記憶にある美しいイギリスの自然風景と想像力と文献などからの知識の融合である。

 

And all amid them stood the Tree of Life,

High eminent, blooming ambrosial fruit

Of vegetable gold; and, next to life

Our death, the Tree of Knowledge, grew fast by,

Knowledge of good bought dear by knowing ill.

Southward through Eden went a river large,

Nor changed his course, but through the shaggy hill

Passed, underneath ungulfed; For God had thrown

That mountain, as his garden-mould high raised,

Upon the rapid current, which, through veins

Of porous earth with kindly thirst up-drawn,

Rose a fresh fountain, and with many a rill

Watered the garden; thence united fell

Down the steep glade, and met the nether flood,

Which from his darksome passage now appears;

And now, divided into four main streams,

Runs diverse, wandering many a famous realm(6.217-34) 

この部分では「自然は静寂であり、平和であることが人間の心を喜ばすものであるが、時には悪をもたらすこと」(植木,1976)ことが分かり、自然の厳しさと美しさの二面性を表している。

 

 

 

むすび

ミルトンは英国文学史において、最も後世に影響を及ぼした詩人であると言える。これはミルトンのピューリタニズム思想などの宗教観や道徳にについてという内容面ではなく、あくまでも彼の詩の美しさという形式的な面にあると考える。ミルトンの詩はしばしばパイプオルガンのような重厚なリズムと評価されるように、彼は詩に関して視覚よりも聴覚を重視していたということを知っていたと考える。またミルトンのblank versの使用は後世のロマン派の詩人たちに影響を与えた。

(3675文字)

 

 

 

参考文献

 西脇順三郎1977)『近世英文学史慶應義塾出版会

和田旦(1976)『イギリス文学慶應義塾出版会

植木敏一(1976116)大手前女子大学論集 10巻 53-59 ミルトンの詩の叙情性

 

イギリス文学で役立つ書籍

 

 

 

 

 

図説 イギリス文学史

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